「先月より売上が下がった理由を教えて」。AIにこう質問して、グラフや説明がすぐに出てくると便利です。ただ、受注した金額を売上と呼ぶ人と、納品済みの金額を売上と呼ぶ人では、同じ質問でも答えが変わります。会話で分析できる道具が増える今こそ、何を数えているかを揃えておくことが大切です。今回は、一つの数字の定義から始める分析の準備を紹介します。
会話から業務データを分析する新しい発表
OpenAIは2026年9月10日、ChatGPT WorkのData agentを発表しました。会社のデータへ接続し、質問をもとに分析や対話型ダッシュボードの作成を進める機能です。発表では、業務用語や指標の定義、独自の計算方法などを分析の文脈として使うと説明されています。[出典1]
9月14日に公式発表を再確認したところ、導入にはプラグインや接続先の設定が必要で、クエリには接続アカウントの既存権限が適用されるとの案内があります。本記事では個別契約での日本向け提供可否、料金、接続先費用、商用利用条件までは確認できていません。利用を検討する際は管理者や提供元に確認してください。導入や実データでの性能検証は行っていません。以下は製品の設定手順ではなく、分析を依頼する前の独自の実践提案です。
まず「売上」の定義を一文にする
最初に、調べたい指標を一つだけ選びます。売上なら「対象月に納品が完了した案件の税抜金額を合計し、取消分は除外する」といった形です。これは説明用の例であり、会計上の扱いを決めるものではありません。自社で承認されている集計ルールや経理担当者の確認に合わせてください。
定義と一緒に、使う表、日付の列、金額の列、除外する状態を記します。担当者ごとに呼び方が違う場合は、別名も残します。AIに「いつもの売上」と伝えるより、集計対象を具体的に示す方が、人が結果を照合するときにも役立ちます。
比較する期間と、データの揃い方を確かめる
月の途中の数字と、前月全体の数字を比べれば、まだ計上されていない分だけ差が出ることがあります。暦月で比べるのか、同じ日数で比べるのか、営業日を揃えるのかを決めます。データの更新時刻も記録し、片方だけ集計が遅れていないかを確認します。
たとえば「今月1日から10日までと、前月の同じ期間を比較する。ただし営業日数の違いを注記する」と依頼できます。目的によっては前年同月が参考になることもありますが、データがない期間を推測で補う必要はありません。比較条件が揃っていなければ、理由の判断は保留にします。
最初は原因よりも、内訳の変化を確かめる
売上が減ったという結果だけで、広告や接客の良し悪しまで決めることはできません。まず件数と一件あたりの金額、商品別や部門別の構成など、手元のデータで分けられる内訳を見ます。何が変わったかを整理してから、考えられる背景を検討します。
AIには「確認できた変化、考えられる仮説、追加で必要な情報を分けてください」と依頼します。ある商品群の構成比が変わったことは集計で確認できても、それが施策の効果なのか、季節や大型案件の影響なのかは別の問題です。仮説を結論として資料に残さないことが大切です。
グラフの前に、件数と合計を照合する
分析結果を受け取ったら、元の表と処理件数、合計金額、除外件数を比べます。空欄をゼロとして扱ったのか、同じ案件が複数行に分かれているのか、取消行が残っていないかも見ます。グラフが整っていても、集計対象の間違いは見た目だけでは分からないことがあります。
差が出たら、AIの説明をさらに長くするより、どの行が集計に含まれたかを確認します。少数の行を手計算や既存の表計算で照合できる状態にしておくと、集計条件の違いを探しやすくなります。原本は保持し、検証用のコピーで作業しましょう。
架空の十件で、分析の依頼文を試す
練習では、日付、案件番号、状態、金額、分類を持つ架空の十件の表を用意します。取消を一件、金額の空欄を一件含めておきます。そのうえで「完了した案件だけを集計し、取消は除外。金額の空欄は勝手に埋めず、確認が必要な行として示す」と依頼します。
期待する件数と合計を自分で計算し、結果を比べます。次に分類別の内訳を出してもらい、その合計が全体と一致するかを確認します。この練習は新しいData agentを契約しなくても、利用が認められた表計算や分析環境で実施できます。架空データを使うことで、顧客情報を接続せずに集計ルールを整理できます。
数字の定義を、次の担当者にも渡せる形にする
うまく集計できたら、指標の名前、定義、対象データ、比較期間、除外条件、更新日を短いメモとして保存します。次回はそのメモを使い、ルールが変わったところだけ更新します。毎回違う指示を入力する運用より、数字の意味を引き継ぎやすくなります。
実データへ進む場合は、接続する資料やデータベースに顧客情報・機密情報が含まれるかを確認し、必要な範囲だけを扱います。分析結果の共有先も社内ルールに合わせます。AIが説明を作れることと、その説明を経営判断に使えることの間には、定義と照合の作業があります。まず一つの指標を、誰が見ても同じ条件で計算できる状態にするところから始めてみてください。
出典・確認日
出典1:OpenAI公式発表。発表日2026年9月10日、確認日2026年9月14日。Data agentの概要と業務指標の文脈、接続権限の説明を参照。指標の定義例、分析の段階、架空データの練習は本記事独自の提案です。
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